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私案

常に日頃,医療従事者として自分の子供・孫の世代も今と変わらない医療環境がどうすれば残せるのかと考えている.とあるサイト財務省のアンケートが紹介され,自分の思いを思いつくままに書いて僕の勝手な意見を投稿した.
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医療従事者(医師)の立場として意見です.医療費削減の名の元に人件費・医療費が削られ身体的過重な労働環境にあります.ただ他の産業と同じで,モラルの高さ,責任感の強さなどにより医療レベルは世界水準を保っています.しかし,この状況は医療従事者の善意により保たれており,そこに医療訴訟が増加し,多くの医療者の精神面を蝕んでいるのが実際です.経済観念からすると,利益は限定(保険医療の規定内)で,リスクは無限大(賠償費用)という非常に割の悪い仕事をしています(現在のところ期待値はプラスだと思いますが).一部の医療者はそれに気付き,リスクのある症例を扱う医療現場を離れていきます.残ったものは一段と仕事が肉体的に厳しくなり,医療事故がおきやすくなるという悪循環です.訴訟回避のためのリスク管理費用は,保険医療に規定され転嫁できず,病院の赤字となり病院閉鎖となります.これが今の医療現場の実際で,このまま医療費抑制だけを行うだけでは,医療は萎縮し自分の子供・孫の世代には医療環境は破綻していると思われます.現在,世界有数の医療環境を次世代に残すべく小生の考えるプランは以下の通りです.

1.患者・国民の医学教育を充実し医療機関受診の機会を減らす.

病院に受診する大半は必要無いものです.風邪を点滴で治す,抗生剤を飲まないと治らないというのは一般に信じられた迷信に過ぎません.患者数が減り,治療が本当に必要な患者さんに医療資源を集中できます.

2.専門医より,家庭医を増やす医学教育

小児科医が足りないと言われて久しいですが,小児の病気は小児科医だけで見ることに無理があると思われます.多くの内科医は小児科のトレーニングを受けていないため,小児患者を診ることを敬遠しています.夜間に小児科専門医の診察が必要かどうか判断できる一般医師を養成することが必要です.

専門医偏重により,一人の患者さんを診るのに多くの医師を必要とします.胸が痛ければ呼吸器科・循環器科,頭が痛ければ脳外科という具合です.専門医の受診が必要な例は少なく,一般家庭医を養成し一人の医師で受診がすむように促すことが必要と思います.

3.家庭医システムを確立し,病院を減らし基幹病院へ集約.

拠点となる病院を選定しそこに専門医を充実させる.それにより症例が集約され,世界をリードする先端医療の発展を促す.

過疎地域の切り捨てという批判が出ると思いますが,日本のような狭い国土で集約化ができないはずはないと思います.オーストラリアなどの医療体制(広い国土を持ちながら,医療を集約化し医療レベルを保っている)を参考にできるのではないかと思います.

4.医療費単価の値上げ

必要無い受診を抑制し,受診時の医療内容の充実を図る.

5.医療訴訟に一定の歯止めをかける

現在の医師のリスクがある職場を離れるという流れは,給与内容に対する,リスクの高さ(訴訟)が原因と思われます.給与水準は変えない(人件費の増加を抑制)で,リスクを限定する制度を確立することでやりがいのある職場環境の提供が望まれます.職人の心意気に頼るような現在の医療環境は長く続きません.

6.脳死をめぐる移植医療の充実

現在,倫理的な問題で移植医療は遅れています.国内では厳しい脳死判定を課している割に,高い医療費を払って海外に移植医療を受けにいくことが美談として取り上げられる状況です.現在はそれでも募金活動で集まったお金で渡米できる状況ですが,国家財政が破綻(円安)すれば今の何倍もの医療費負担となり海外へ移植を受けに行くこともできなくなります.

移植医療を発展することにより,移植後の免疫抑制剤などの周辺製薬産業の育成,医療従事者の知的探究心の向上,国民へ先端医療の供給,金に物言わせて海外へ臓器を買いに行っているという批判の回避など,プラス面が多くあります.

以上,医療費の総額を変えずに,内容を変えて医療環境を次世代に残して行く私案です.

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特に移植医療については特に危惧しています.今のどこかの途上国のように,子供や孫の世代がその国に生まれなければ助かる病気なのにという状況にならないように...各自が死について考え,何を持って生きているのか考える必要があるかと思います.ただ2時間毎に体位を変えながら(床ずれ予防),チューブで流動食を入れられ生き長らえていることが本当に意味があるのか? そこに費やされる医療で,次の世代の医療がひっ迫し財政破綻を助長することを,その意識のない老人は望んでいるのか? これは,日頃から死を考えることを避ける風潮を変えて,生と死について考えていないといけません.植物状態になる可能性が高いと言われても,可能性が0%じゃないのならと人工呼吸器に継がれ植物人間が増産されている実情をなんとかしないといけません.これは将来各自に必ず課せられている問題です.

僕には医療以外の環境はわかりません.各自の判る範囲で,次の世代の日本人にどうすれば良い環境を残せるか考えていかないといけないと思います.僕らの子供が,親父の世代の官僚・政治家がこれをした・あれをしたから今悪いんだと後ろ向きなことを言い出したりしないように.....現在,批判ばかりして何をしなかった,何をしただということが問題にされています.挙句の果てに,個人の責任に帰着してしまいます.それを生み出すSystemを改善していこうという流れに変わらないといけません.

現在の日本の財政危機が,官僚が何をした・しなかったという批判をするのは簡単です.まず,空から雨の代わりにロケットが飛んできたり,物を盗まなくても御飯が食べられ,雨風をしのぐ家に住むことができる現在の日本で生まれ育っているのは,世界60億のほんの一握りということに気付かなければと思います.役人・政治家を含めて先人のおかげだと感謝して,これを次世代に引き継ぐにはどうすべきか考えないといけません.

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コメント

素晴らしい見解に大変勉強になりました。
日本は資源がなく技術力を高め国際競争力がないと生きていけません。商品単価を下げることも重要です。そのためには全てのコストを削減する努力が必要です。従業員にかかる医療費を低下させることは商品単価を低下させ、ひいては日本の国際競争力の向上につながります。企業の技術研究者は私の目からは非常に恵まれた環境にあると思います。しかし彼らを優遇することにより企業は生き残れるわけです。医療は全ての人の基礎であるわけですが、ババを引いているのは間違いないでしょう。日本車が海外で売れているのは一台あたりのかかる医療費が安いのもひとつの理由です。アメリカからの圧力により日本の医療は高額の医療材料を購入してるにもかかわらず非常に定額の費用ですんでいます。無秩序な医療機関の乱立により多数の医者の拘束時間が延長し、無用な医療設備投資が多いのです。医者が夜中に働いて、翌日も引き続き働いているという事実を知っている一般人は実は非常に少ない。検査数も海外の数倍の数でありますが、出来高払いでかつ非常に低額の検査費ですので、やらざるを得ないのです。しかも医療費が安いことが、反対に患者の権利意識のみを増長させているのではないかとの懸念があります。夜中の軽症患者が8割を超えるという事実が言われている。しかも夜中にもかかわらず過剰検査を要求できるのです。移植にいたっては中国をせめることは出来ません。日本人は大金をはたいて海外まで臓器売買に出かけている、、おそろしい国民です。南無阿弥陀仏。

投稿: 修行僧 | 2006年10月15日 (日) 20時50分

修行僧さん

久しぶりです.僕の覚書の戯言に目を通されたんですね.:-)
多大な無償の善意に大きな基礎を置く現在の医療体制では長続きしないですよね.互いの善意がうまく形になる社会のためには,どうするべきかいろいろ夢を見ています.

投稿: 夢見るK | 2006年10月16日 (月) 11時24分

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