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医療事故無過失保障保険→医療訴訟を減少

私信にてやりとりさせて頂いている方の質問に「医療事故無過失保障制度」がよくわからないということなので,今日はその説明をします.

医療事故は大きく2つに分けて考えます.(1)医療過誤という明らかな人為的なミスによる被害と,(2)どうしようもない災害的な医療過誤以外の医療事故です.

ただこの医療過誤なのかどうかの線引きが難しいのです.明らかにリスクの大きなことをすれば,一定の頻度で期待通りの結果が得られません(投資と一緒ですよね(~_~;)).期待通りの結果が得られなかった場合に,訴訟となります.

現時点でも,既存の医療過誤賠償保険(民間保険)は存在します.ただ,目的は上記の医療過誤を対象としています.人為的に明らかなミスがあるもののみが保障されます.

実際の臨床現場では,医療過誤といっても事故の要素が強いものも多いです.そういった際には,治療費を免除したり見舞金を払って丸く治まるものもあります.ただ,医療従事者・病院・保険会社さんで,誰が費用を持つのかが問題となります.明らかな過誤が存在しない場合は保険会社さんはお金を出しません,しかも医療従事者が勝手に示談したものも出してもらえません(結局裁判の結果待ち).医療従事者も自分に全ての否がなければ払いません(自分の部下などの関与になるとますます難しくなります).病院も特に公立病院の場合はこういったグレーゾーンのお金は捻出できません.結局,患者さんは訴訟を起こして,誰に責任があるのか白黒をはっきりつけるしかなくなります.

患者さんの期待通りに結果が得られなければ訴訟を起こされるかもしれないという恐怖が蔓延り,リスクのある辛い仕事は避けます.コスト削減で人件費も抑制され,残された医療従事者はますます忙しくなり,より過誤を起こしやすくなる.訴訟を起こされないために防御的医療(不必要な検査・治療)が施され,限られた医療資源が浪費される.多忙を極める現場などシステムの問題なのに,不必要に個人の責任のみを追求する医療訴訟が増加し,医療崩壊していく一面です.

そこで,未然に医療訴訟を防ごうと,人為的な問題かどうかは関係なく,起こった医療事故に対して保障する制度が無過失保険です.誰が悪いわけではない事故に保障金を支払い,無用な個人の責任の追及(医療訴訟)を未然に防ごうとする制度です.欧米のどこかの国では実在する制度です.日本でもたびたび導入が叫ばれていますが,結局は財源がなく頓挫している状況です.

患者さんみんなが,医療機関に治療検査に関わるリスク保障を求めれば,必然的に掛け金(医療費)は高くなります.現在の医療訴訟増加は,皆で自分で自分の首を絞めているようなものです.医療崩壊の原因として,むしろ子供・孫の首を絞めているという表現が正しいのかもしれません.(~_~;)

この無過失保障制度は,無用な個人の責任の追及し挙句の果てに医療崩壊を進める医療訴訟を減らすことに大きな意味があります.

僕の構想(妄想)では,医療機関からの申請により一定の費用を保障することにします.申請書には,週当たりの勤務時間,経験年数etc.など記載してもらい,データベースとして医療事故・過誤削減のシステム改善に役立てることもできます.

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リスクのある患者さんを診れば診る程,破産を早める現在の医療構造

私事により急遽本日から公開予定だった構想(妄想?)の発表を変更しました.話題を少し変えて,なぜそんなに現在の日本の医療システムは崩壊すると思うのか,一般の方へ解りやすく説明を試みます.

まず産科を想定してみましょう.40万の分娩費用で,10万円の収益があったとします.医療事故が発生し1億円の損害が発生するとします.この条件下では医療事故の発生率を0.1%にしたとしても収益はなしです.期待値10x0.999-1x0.001=-100と続ければ続けるほど収益は悪化します.医療の世界では経費削減で医療事故は増える傾向にありニアミスのような話はいくらでもあります,分娩を扱うのに医療事故を0.1%以下にすることは難しい状況です.その上,世界一と評される周産期医療の発達した現在の日本でも脳性麻痺の発生率は 0.2%あり,理論的にも不可能と思います(脳性麻痺は分娩によって引き起こされているのではなく,分娩によって新生児仮死などとして顕在化しているだけとも言われているため)

こんな状況では産科医療が崩壊するのは必然です.増加する医療訴訟が生んだ弊害です.

ただこれは産科に限った話ではありません.それ以外の職場も想定してみましょう.あなたが医師・看護師・病院経営者などの何らかの医療従事者になったとして,何かの医療処置に1万円の利益があるとします.事故が起こり1000万の損害が起こったとすれば,事故の発生率を0.1%にしても収益はありません.期待値1x0.999-1000x0.001=-10で続ければ続けるほど破産します.

現在これでもシステムが保たれていたのは,日本人特有の道徳・仕事が第一という考え方(善意に多分に依存しています),まだそこまで医療訴訟が多くなく民間の賠償保険も高くない上に,医療機関に公費による補助があるためです.

このまま増加する医療訴訟を放置すれば賠償保険料も高くなり,行き着く先はアメリカの医療です.救急車に乗って救急受診すると20万かかり,虫垂炎(盲腸)100万とかの医療費がかかる世界です.高い医療費→高い保険料で大量の無保険者を生みます .例え保険に入っても高い医療費をカバーしきれず,中流階級以下の家庭は大病をすれば医療費が払えず破産するという世界です.僕はそんな医療システムは嫌いです,何もしないで今の状態にジっと耐えるより,無駄に終わろうが少しでも次の世代に繋がる医療を目指した行動をとります.なぜならば,今と何も変わらなければ,医療崩壊は必然ですから..

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夢の医療データベース

今回から僕の実現したいと思っている構想(妄想?)について少しずつ書いていく予定です.

まず現在の医療の問題点は,いろいろ問題があると思いますが国家・地方財政が破綻すれば一緒に破綻するシステムです(病院の赤字を公費で補助しているので).これをある程度代用するものとして,グローバルな製薬業界のお金が入ってくる構造を考えています.医療崩壊の危機感は僕の過去記事も参考頂けると幸いです.

製薬企業さんにとって今の日本の魅力は,薬を消費する市場としての魅力だけであり,薬を開発する魅力はあまりないと考えます(グローバル化で新薬開発は海外に流れる一方と聞きます).そういう意味では,日本の医療市場の縮小が現実となれば多くの外資製薬企業は一緒に撤退していくことになると思われます.

日本が製薬企業に魅力的な新薬・医療機器開発の市場とするにはいろいろ問題がありますが,まずデータベースの整備が必要と思っています.国民個別にトラッキングできるようにデータベースを作り,治験患者の收集,生存率・効果判定などをするためです.日本での收集データは信頼性が置けるものだとできる全国的な基礎情報データベースです.

検査好きの日本人ですが,現在はそのデータは単発的に施行されて蓄積・解析は全くされていないと思います(非常に不効率).人間ドッグなどのデータも含めて蓄積,検査の有効性なども判断できるようにならないと意味がないと感じます.

それに加えて移植意志表示のデータ・リビングウィルのデータも取り込みます.移植医療の促進し,高度先進医療の育成及びその関連薬剤の開発促進することができます.医療資源が不効率に費やされている終末医療の効率化も図れます.

こうして收集されたデータベースは,Webでアクセスできるようにします(Web2.0のようなAPIの公開).そうすることで世界中の研究者が,日本のデータを使って研究をしてくれるようになります.

では,どうやってそのデータベースを構築していくか?また次回に..

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白衣を脱ぐにあたって..

僕は今まで研究もせず臨牀一筋で,幸い同僚・上司にも恵まれ大きな事故もなくやってこれました.身近な方々には御存知の方が多いですが,この3月から日本に帰国し白衣を脱いで(臨床を離れて)新たな分野で勉強・挑戦させて頂く予定です.この場を借りて,患者さんも含めて御世話になった方・なっている方・これからなる方の全ての人々に感謝の気持ちを伝えさせてください.人間の短い一生のうちで,一瞬でも御一緒させてもらうのは世界60億人のほんの一部です.その低い確率の中で,貴重な時間を割いてもらって喜怒哀楽を共にしてもらった人は僕にとって大切な方々です.

僕の方は,中国で過酷な貧困の差を見せ付けられて,人口20%HIVに感染している南アフリカの同僚医師の話などを聞いたり,国を捨てて生きて行こうとする人を見たり,金がないと何もしてもらえない医療というのを見たり...中国に来てから,自分はなんて恵まれた国に生まれて,恵まれた環境で育ったのだろうと心底気づかされました.

「貧困が病気を生む」これが現実で、これから貧富の差が大きくなり貧困が生み出され医療崩壊が進む日本では、これまでのひとりひとりの患者さんを治すだけでは後に繋がらないと感じています.この貧困を失くすにはビジネスの力の必要性を感じるに至りました.

そうして危機に瀕した日本の医療起死回生の策を考えるうちにある構想を思いつきました。ただこの秘策(?)を実現するためには、今の自分にビジネスの知識・スキルがなさすぎる事を痛感しています.そうして妻の了承も得て家族を養いながら,少しでもビジネスに近い分野の勉強ができるところ,製薬会社さんへ転職です.幸い雇うと言ってくれるところも見つかり,この3月からある製薬会社さんで働く予定です.また違った世界で厳しい現実が待っていると思いますが,人生は夢を見続けることが大事と思って家族を路頭に迷わせないようにはやっていくつもりです.

家族を含めて互いの幸せ・健康が続きますように.これからも末永く宜しくお願いします.

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避けられない医療崩壊

医療崩壊と叫ばれて久しいが,財政破綻の話と同じで一般の方にはまだ実感が少ないというのが本音ではないだろうか?

医療者従事者には,現在の医療体制が長くは続かないと感じる人が大半と思われる.

病院の7-8割が赤字に見舞われ,收入は医療費抑制から市場原理から開離した管理下に制限,経費削減のため人員も抑制,そうして起こった医療事故に損害賠償.下記の記事に経営的に厳しい環境の一面が現れている.http://www.hiroshima.med.or.jp/kenisikai/kinmui/2006/1960_022.pdf
こうして熱意だけで働き続けた医療従事者が勤務医を辞めて開業する.開業しても経営的に厳しくうまくいかないケースも多いと聞く.

その医療体制の根幹を支える国家の財政状態は下記の状況である.
http://www.mof.go.jp/zaisei/con_02.html
例示されているように,一般家庭で40万の月収とすれば借金が5200万あり,月収40万から15万を借金の利子の返済にあてて,24万を新たに借金している国()である.医療費30兆円,上記の月収40万に例えれば24万相当の額.この何割かを国が支えるわけだが,こんな自転車操業をしている国(家)に健康は基本だからといって負担増を求めることは難しい.いくら経済活性化して税収が増えても,月収40万(50兆円)が月収60万(75兆円)になるわけではない.現在のもしくはそれ以上の医療費抑制は必然的に続く.

そしてホテルに泊まるより病院に泊まった方が安いような,今までの24時間いつでも受診できる医療体制は崩壊する.医療機器・人件費などホテルの運営よりはるかに経費がかかる.それがこれまでやってこれたのは国・地方自治体が支えてくれていたからである.
進まない移植医療,新薬・最新医療機器の認可の遅さなど,最新の医療から取り残される.治療のためには海外に行くしか道がなくなり,命の沙汰も金次第という時代が来るかも知れない(一部の医療は実際そうなっていると思うが..)

現在の医療システムの持続性は上記の状況でかなり疑問である.加齢・病気でハンディを持った人を支えるには費用がかかる.高齢化を迎える日本の社会で負担は増える一方である.これに公費をつぎ込み続ける国・地方自治体に体力がない.

それに対して製薬業界は非常に大きな産業で体力がある.グローバルに展開する製薬企業は,アメリカ株式市場でも巨大企業である.この莫大な民間市場には莫大なお金が動いている.僕の考える構想は,この新薬開発という市場のグローバルなお金の流れを日本に引き込むことである.国民全体が新薬開発・医療技術の発展に貢献することで,開発に関わるお金が医療基盤整備の一助となり最新治療の恩恵を享受するようなシステムである.その上,医療基盤と最新の医療技術を子供・孫の世代に残すことができる.新薬開発に関連した市場が日本で発展すれば経済活性化にも寄与し,老い(高齢化)が単なる消費(negative)から生(positive)に変わるシステムである.

新薬開発の日本市場だけを見ても以前は7割日本で開発されていたものが,逆に7割がもう海外に流れているそうである.医療費削減に喘ぎながら片手間に新薬開発に協力する医療従事者の状況では,高コスト・遅い・品質が悪い・非英語圏では市場の魅力はなくなる一方である.この危機的状況から回避する方法,それが僕の思い描く構想である.

これを実現するための具体的手段()については,また折を見て書いていきたい.

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