« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »

最終出社日を終えて。。。

7/25についに前職の最終勤務を終えた。8/1~は次の会社へ勤務する時となった。

前職は1年半弱の勤務であったが、多くのことを学ばせて頂いた。上司・同僚に恵まれたおかげだと改めて感じている。生涯の財産となる多くの経験をさせて頂いて、ここで学んだことをまた次のステップに有効に活用していきたい。
EBMのための市販後臨床研究環境の問題、会社という組織での働き方、欧米人の考え方と日本人の考え方の違いetc.と数えきれない学びがあった。
この場を借りて、改めて「本当にありがとうございました」と言いたい。

次の会社でどうなるかは全くの未知数だが、自分の能力を信じて前に進むのみ!!
Stay hungry, stay foolish!!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

病は気から...

使い回し医療コラムの最終回。

退職にあたって、現在の会社でお世話になった同僚が少しでも幸せな人生を歩んで頂きたいと思って書いた記事。
実は、ここで紹介した認知療法を、最もkey personであった私の部下に約4ヶ月施し続けてきた。臨床をしていた時代を含めて、この方が現在のところ一番 認知療法で私の時間を費やした人である。この人曰く「自分は簡単に自分の考えを変えられたことがない人間でしたが、○×さん(私)には変えられました。」とのことであった。自分としては、臨床で鍛えたスキルを使ってかなりの時間・手間を惜しみなく費やしたので、後は継続的に自身でやってもらうことを期待している。

# ちなみに、感情をうまくコントロールして欲しいと期待して、この認知療法を私が一番施そうとした人がいる。それは妻。。。ただ、彼女との関係は微妙すぎて傾聴してもらえず失敗し現在に至る。。。医師-患者関係、上司-部下関係とは違って、夫婦関係は相手が傾聴せざるを得ない状況ではないので難しい。。これは私の生涯の課題かなぁ。。:-)

-------------------------

病は気から...

昔から「病は気から...」とよく言われます.臨床医として患者さんを診ていると,これはよく実態を表した言葉だと感心しています.一般診療において,頭痛,動悸,めまい,胃部不快感などを主訴に多くの患者さんが受診されます.施設によりますが,3-6割は精神的ストレスに起因するものです.医師は,医学的介入が必要な器質的異常が存在しないかを判断していて,重症を除いては「様子を見ておきましょう」と「また症状が悪くなるようなら受診して下さい」と放置されがちです.

また,病院に受診するほどではないものの,皆多かれ少なかれストレスを抱えて生活をしています.

このストレスの多くは人間関係に起因していることが多いです.豊かな人間関係を構築する一つの方法として,今回は認知療法について紹介したいと思います.

変えられるものと変えられないものを区別する

人間関係でストレスを感じる時はどういう時でしょう? それは他人が自分の期待するように動いてもらう・考えてもらえるように,他人を変えようとするときです.他人を変えようとするのに,変えられないときに一番ストレスが掛かります.そしてよくある誤解は,他人は変えられると思い込んでいることです.他人(相手)を怒ったり・脅したりすることで他人(相手)を変えられるように思いがちですが,これは一時的な効果で人間関係は反って悪化して,ストレスを生む原因となります.

直接的に変えられるものが何で,変えられないものが何かを考えて見ましょう.我々が意識的に変えられるものは,自分の「考え方(物事の捉え方)」と「行動」のみです.それ以外(他人)は全て直接的には変えられないものです.他人は自分の手足のように意識的に操作できるものではありません.手足のように動かせないものを,手足のように動かそうとすることは大きなストレスになります.では他人(相手)にできることは何でしょうか? それは「情報」を提供して「気付き」を促すことです.そうして間接的に他人(相手)の行動が変化することです.

「考え方(物事の捉え方)」と「行動」により「感情」が変化する

よくある訴えに,あいつが○×したから,気分が悪くなるというのがあります.暗黙のうちに,自分ではなく周囲の環境が原因で,自分の感情はその結果だと思い込みがちです.ただ,ここには無意識にうちに,周囲の環境をどう捉えるかという大事な「考え方(物事の捉え方)」のプロセスが隠れています. 

例えば,「買ったばかりの高級外車を運転していて事故を起こして,体は無傷だけれども車は廃車になった」とします.「車が廃車になった」という事実から「ついてない」という捉え方もできますし,「事故を起こしたのに体は無傷」という事実から「幸運」だという捉え方もできます.前者の考え方では気分が悪くなりますし,後者の考え方では気分がよくなります.これは事実の「考え方(捉え方)」により感情が変化しているだけです.そして,この「考え方(捉え方)」は習慣により無意識的に行われています.

又,「行動」を変えることで「感情」が変化することも留意して下さい.例えば,自分の好きな歌手・コメディ映画を観たり,自分の趣味をしてみて下さい.気分が良くなると思います.「行動」を変えることで,「感情」が変わることを実感できると思います.

こうして自分の感情というのは,周囲の環境が決めることではなく,自分が無意識のうちに決めていることだというのが御理解頂けたかと思います.この無意識的に行われている「考え方(物事の捉え方)」を変えて,「行動」を変えることで,自分自身を「幸せ」・「不幸せ」にすることができます.相手がこうしているから,周囲がこうだからと捉え続ける限り,「幸せ」と感じることができません.

「考え方(物事の捉え方)」は多種多様

「考え方(物事の捉え方)」を変えることで感情が変わることを理解頂けたら,この「考え方」というのは同じ人でも時間・場所で変化するもので,当然,人により全く違うことを意識して下さい.同じ映画館で同じ映画を観ても,絶賛する人もあれば,批判する人もあります.その時の気分で同じ人でも違う感想になったりします.

ついつい同じ環境で働いている同僚・家族には,自分と同じ考え方をすることを無意識的に期待します.ただ,これは実は違う人間である限り不可能なことと意識して下さい.それを意識して頂く(捉え方を変える)と,「どうしてこの人はこんな考え方・行動を取るのだ」といった負の感情を和らげることができます.

「許す」ことは,相手のためではなく自分のためである

自分の責任ではなく,相手の責任だと捉えている問題があるとします.自分としては明らかに相手が悪いと思う状況で,相手がそれを認めないことで感情が乱され気分が滅入っているとします.その場合には,「起きてしまったことには拘らないのが一番です」とアドバイスをします.多くの患者さんは,「どうして一方的に私が許さなければならないんですか?」と疑問を呈します.

これは,相手を許しているように見えて,実は自分を許して自分自身を自由にしてあげていることに気付いていないためです.何か起こってしまった「変えられないこと」に対し,謝ってくれそうにない相手に謝ることを期待するのは,変えられないことを変えようとして自分自身を不幸にしているだけです.そこで「変えられるもの」は自分の「考え方」・「行動」だけと意識した場合には,取るべき行動は「許す(拘らない)」ことです.そして「許す」ことは,変えられないものを変えようとするストレスを消し,又,自分の大切な時間がそれを考え続けることで浪費されるのを防いでいます.相手のために「許す」のではなく,自分のために「許す」と捉えることで,負の感情を緩和することができます.

 

こうして変えられるものは自分の「考え方」・「行動」だけであり,「感情」は全て自分自身が決めている(自分の選択の結果)という意識を常に持つことで,自分のストレスを軽減することができます.

 

変えられない相手をどうやって変えるのか...

こうやって考えていくと,他人は変えられないという無力感に陥るかもしれません.他人は全く変えられないわけではありません.自分の手足のように,直接的には変えられないだけであって,間接的には変えることができます.それは他人に気付き(情報)を与えることです.「このままこうしているとこうなるよ」と助言したり,「こう捉えてみてはどうだろうか」と情報を与えて,相手の価値観では存在しなかった新しい捉え方の情報を与えることです.その「情報(気付き)」を得て,相手がどう行動するかは相手次第です.相手の「考え方(捉え方)」は,自分の考え方と同じにはできませんが,多くの情報を共有して価値観を揃えていくことで,だいたい似たものになって行きます.ただ,これには非常に時間がかかり,根気が必要です.

相手に情報(気付き)を与える時に気を付けること...

特に親子関係・上司-部下の関係において,非常に話しにくいnegativeなことを話すことがあると思います.そこで,気を付けるべきことがあります.親子関係・上司-部下の関係は,力関係が対等ではないために,相手に対して過大なストレスを与えるという事実です.

相手に過大なストレスを与えないように,問題点を指摘するのに注意することは,相手が直接に変えられること(changeable),すなわち問題となった「行動」を指摘することです.決して,相手が直接変えられないこと(unchangeable),すなわち「性格」・「能力」など指摘しないことです.自分が変えられないことを,いくら指摘されても,ストレスを抱えさせるだけです.

そして問題点を指摘した場合に,過度な一般化を自分も相手もしないようにすることです.「いつも君は○×なんだ..」とか「いつも自分は○×なんだ...」という捉え方は,うつ病のリスクを増大させます.「この状況をどうやっても変えられない」(unchangeable)という無力感は与えないように注意が必要です.常にこの状況をこうすれば変えられる(changeable)という指摘の仕方(情報の与え方)が理想です.

 

最後に

上記の私の話は,「選択理論」という認知療法の一つを基本にしています.この認知療法の考え方とLeader Behaviorの精神に多くの共通点があることを興味深く思っています.ご興味があれば,「選択理論」をキーワードに一般向けの本がアマゾンコムでも手に入りますので読んで見て下さい.

言うのは簡単ですが,なかなか完全な実践は難しいです.自分自身も含めて皆様のストレスが少しでも緩和され,豊かな人間関係の構築が進むことを切に願っております.

これまで3回,4半期に一度掲載させて頂いたコラムも今回で終了です.いずれかの記事が皆様の人生にちょっとした「気付き」を少しでも提供できていれば幸いです.

| | コメント (5) | トラックバック (0)

健康診断前に健康的な食生活を送ることに意味はあるのか?

健康診断前に健康的な食生活を送ることに意味はあるのか?

私が臨床で患者さんを見ていた頃に,健康診断の前に1ヶ月程健康的な生活を送って「異常なし」の結果に満足されている方をよく見ました.今回は健康診断の意義とその関連した話題について書きたいと思います.

一般論として

健康診断の目的は,病気を早期診断・早期治療を行い病気の進行を抑えることが目的です.各検査項目により,見つけようとしている病気は違いますが,一番多く健診で引っかかる病気は生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症)です.

今話題のメタボリック症候群も生活習慣病の類です.

健康診断では,この生活習慣病を見つけることが一つの大きな目的となっています.

生活習慣病と言われる糖尿病・高血圧・脂質異常症は,極端なものでなければ本人に症状はありません.では,どうして生活習慣病を見つけ指導・治療することが重要なんでしょうか? ...生活習慣病を治療する究極的な目的は,血管の老化(動脈硬化)を防ぐことです.

血管の老化(動脈硬化)って?

人間として生まれた以上,血管の老化は必然でどうしても避けられません.人間は癌・感染症などで生き延びても,最終的に血管の老化により死んでしまいます.

血管の老化は,最終的には心筋梗塞・脳梗塞・老衰といった症状となって現れます.

また,太古の昔から不老不死となることを夢見て,その秘薬を捜し求めていますが,未だ誰もその方法は見出せません.血管の老化は人間皆に平等に与えられた宿命です.

血管を水道管に例えると..

人間の血管を水道管に置き換えて考えて見ましょう.人間の体に埋め込まれた水道管は非常に優れ物で,あんなに細い管に血液のようなドロドロしたものが流れていても上手に使うと80年以上も持つのです.ただきれいな水を流していても水垢がつくように,どんなに上手に使っても水道管は傷んでいきます(老化)

ただこの水道管も使い方があまりに悪いと,40-50年で壊れてきます.汚い水を流していると,すぐ目詰まりを起こします.高い圧をかけて使っていると,破裂したりするわけです.また水道管(血管)は実際にトラブルが起きる(破裂・詰まる)まで何の症状を出さないと言う特徴があります.

この汚い水かどうかを調べるのが血液検査であり,高い圧かどうかを調べるのが血圧測定なわけです.高い圧というのはすぐ高血圧と理解いただけると思いますが,汚い水とはどんな状況でしょうか?

「汚い水」

この水道管に目詰まりを起こしやすい汚い水を流している人というのは,高脂血症・喫煙者・肥満者・糖尿病がある方です.自分のお腹の周りの脂肪を掴んでみて下さい.この脂肪はどこからどうやってやって来たのでしょうか? それは食事からですね.食べた食事は消化管で吸収され,血液を介してお腹のまわりに脂肪となってつくわけです.その脂肪は少なからず,途中通って来た血管に沈着して動脈硬化を進展させるわけです.

脳梗塞・脳出血を起こして,よく聞く言葉

私が臨床をして脳梗塞の患者さんを診ていた際によく聞いた言葉があります.

実際の患者さんの話をしてみましょう.脳梗塞・脳出血ではいつもと変わりなく動いていた体の一部がある日突然動かなくなり,本人・家族はビックリして救急車で病院にやって来ます.診察すると明らかに脳の血管の病気です.脳梗塞もしくは脳出血が疑われると話すと,大体の本人or家族は「今まで大きな病気をしたことがないのに...どうしてこんなことが起こるんだ?」と行き場のない怒りを抱えて仰天されます.

そしてよくよく話を聞いていくと,糖尿病・高血圧・高脂血症の既往があります.医師の立場からは,血管系の病気を起こす明らかなハイリスクなんですが,本人・家族には病気という自覚がありません.入院されてから,どうしてこの病気が起きるのかを説明して,生活習慣の改善が必要と痛切に自覚されると,それまで止められなかったタバコを止めて体重を減量されます.さすがに脳梗塞を起こしてタバコを続けている方はほとんどいないです.涙ぐましい努力で,禁煙・減量をされるのですが,動かなくなった体は残念ながら動かないままです.それは血管の老化は一方通行で,若返りできないためです.脳梗塞を起こした後に,健康的な生活を送っても,やはり起こしてない人よりは,再発のリスクが高く常に又発症する心配をしなければなりません.

結局は症状が出る前,すなわち血管が老化(動脈硬化)する前から,生活習慣を改善するのが一番賢明な方法です.

頭の体操クイズ

耳の痛い話が続きましたので、ここで小休憩しましょう。

簡単な頭の体操クイズです。

 

ここに仮想の商品として、これを使ってあなたの寿命と家族の寿命を縮めることができます。日本円で一個200-300円で売りましょう。

 

さあ、この商品を皆さんは買いますか?買う人をどう思われますか?

殺戮兵器として売ればいいかも知れませんが、あまりに執念深くゆっくり効くために兵器としては売れません。

実はこれは現実に存在する商品です。ついでに買うときには税金がかかります。

世界でよく売れています。多分、トヨタさんの新車販売台数より多いと思います。

なぜ普通に考えると皆買わないようなものが、こんなに売れているのか?

よっぽどマーケティングがうまいのでしょうか?

 

うすうす気付いたかもしれませんが,この商品とは「タバコ」です.どうしてタバコの話をしたかというと,前述のようにタバコは血管の老化を早める因子として重要なんですね.他にもありとあらゆる害があります.

タバコは肺癌を連想すると思いますが,実際は血管の病気などの癌以外の病気への影響が多いとされています.

虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症),脳梗塞

クモ膜下出血,喉頭癌,食道癌,口腔・咽頭癌,肝臓癌,肺気腫,肺癌,胃癌,胃潰瘍,膀胱癌,膵臓癌

これらはタバコによってリスクが上がる病気です.まさに「タバコは百害あって一利なし」です.

イギリス(?)の疫学研究で発表されているそうなのですが,
30
歳前後で禁煙、約10年寿命延長
40
歳前後で禁煙、約 9年寿命延長
50
歳前後で禁煙、約 6年寿命延長
60
歳前後で禁煙、約 3年寿命延長

...と言われています.

まとめ

健康診断を受けて,高血圧・高脂血症になりかけているだけで異常無しと言われて安心しないで下さい.

水道管に例えると血液検査は水質検査をしています。そのときだけ、健康的な食事をして結果が良くても、水道管つまり血管が良くなっているわけではありません。

 

血管の老化は一方通行で,戻りません.若いときからの生活習慣が全てです.

皆さんの血管の中は誰も見れません.いつどこで心筋梗塞・脳梗塞・脳出血が起きるかは誰にもわかりませんが,何らかのリスクがある人に起きてくることが殆どです.

上手に使うとは,管にきれいなものを流し,高い圧をかけないことです

またこの生活習慣病は,名前の通り生活習慣を変えることが根本治療であり,健康診断の前に1ヶ月程生活習慣を変えると正常化することも可能です.ただ,生活習慣は一年のうち1ヶ月だけ改善すれば良いわけではありません.

 

 

ついでの余談

この記事を読まれる方は本部の方で現場のMRの方はほとんど読まれないかと思いますが,salesアップを願って最後の余談を...

皆様が患者さんの立場で,生活習慣病の相談をしに行くとします.初対面の医師が,タバコのにおいをプンプンさせながら肥満で生活習慣病の説明されると説得力があるでしょうか? あまりそんな先生の話は信用できないと感じるのではないでしょうか?

逆の立場で,MRの方から医師が説明を受けるのも同じです.初対面であったMRの方が,タバコの匂いをプンプンさせて肥満で高脂血症と心筋梗塞のリスクを熱く語られても本当にこの人は病気のことを解っているのだろうかと医師は感じるかもしれません.

「先生,○×の販売をするのに,心筋梗塞のことをよく勉強して生活習慣病管理の大切さを学びました.そうして体重をX kg減量して,タバコも止めました...」そんなことを言われるMRの方は,先生に「こいつは本当に病気のことをわかっているんだ」と感じてもらえるかもしれません.しかも自分と家族の寿命を延ばして,余計な税金も払わず,salesアップで給料もアップ(?)...と良い事尽くめですね.

免責

いつもの如く,私の個人的記憶に頼って書いておりますので,誤植混在の可能性は御留意下さい.

| | コメント (5) | トラックバック (0)

鳥インフルエンザも念頭に置いた,インフルエンザワクチンを受ける意味

ちょっと余裕がないので、今日から3回シリーズで社内の医療コラム記事の使い回し。。。本来のblog titleの「家庭の医学」へ戻ったかな。。(笑)

--------------

鳥インフルエンザも念頭に置いた,インフルエンザワクチンを受ける意味

昨年は衛生委員会からの進言もあり,内勤者にもワクチン接種の一部費用補助が実現しました.それに関連して,インフルエンザワクチンが勧められる根拠について書きたいと思います.

一般論として

流行性感染症に対するワクチン接種の目的は一般的に,
(1)
個々の人(個人)が感染することを予防,もしくは感染時の症状を軽減する
(2)
集団としての感染・流行を抑制する
..ということになります.

多くの方が(1)の有用性はすぐわかって頂けるかと思います.ワクチンで免疫を誘導することで個人の感染を防ぎます.

次に(2)の意味はどうでしょう.少し解りにくいかと思いますが,集団感染を防ぎ流行を抑えるという意味です.各疾患により流行を防ぐために必要な予防接種率の目安があります.要は,集団のうち何パーセント予防接種していれば,感染が散発的に起こるのみで流行せずに済むかという目安です.確か,インフルエンザは最低70%程度(?)の集団摂取率が必要だったと思います.

インフルエンザワクチン特有の話として,

インフルエンザの流行株予測を,WHOが北半球・南半球に分けて,A型から2(?)B型から1(?)発表します.その発表された予測を元に各国でワクチンが作られます.よってワクチンはインフルエンザA型・B型関係なく有効で,北半球に住んでいればほぼどこの国でも同じ種類のインフルエンザワクチンを受けることになります.

この予測が当たっているときには個人レベルでは70%(?)ぐらいの確率で発症を抑え,発症した場合にも症状を軽くできると言われています.

インフルエンザ脳症は別として,ウイルス感染自体で命を落とすことは少なく,多くはウイルス感染後の細菌性肺炎が合併症の多くを占めます.話は反れますが,一般の風邪を含めてウイルス感染には抗生剤は効かないので,耐性菌のことを考えると最初から抗生剤を飲むことは勧められません.

こういった合併症を起こし易いのが老人・子供であり,予防接種の公的補助が行われます.又,医療従事者などのハイリスクの方も受けることを勧められています.

鳥インフルエンザに関連して

鳥インフルエンザには効かないけれど,インフルエンザワクチンを打ってパンデミック[1]を予防しましょうという話を聞いたことがあるでしょうか?

一見矛盾した話に思われますが,鳥インフルエンザに効かないけれども,インフルエンザのワクチンはその予防のために推奨されます.

鳥インフルエンザが人間-人間の感染を起こす能力を持つとパンデミックと呼ばれる状況になります.現在は,基本は鳥→人間の感染で,人-人の感染は特殊な状況でしか起こっていません.鳥インフルエンザが人-人に感染する能力を持つようになるのは,普通のインフルエンザと鳥インフルエンザに同時に感染した時に発生すると考えられています.要は,インフルエンザワクチンを打つことで従来のインフルエンザを予防することが,鳥インフルエンザ→パンデミックへの移行を阻止することになるというわけです.

では,日本で世界最初のパンデミックが発生することはないだろうから,日本では鳥インフルエンザの予防のために従来のインフルエンザワクチンを打つ必要はないのでしょうか? 答えは日本でも打つべきです.パンデミックは北半球でインフルエンザが流行る頃に起こり易いです.日本にインフルエンザが流行している状況に,パンデミックが入ってくることも想定されます.パンデミックの状況で,普通のインフルエンザにかかると不必要に病院でパンデミックに曝される危険があること.普通のインフルエンザなのに,インフルエンザの診断がつかず(検査キットは万能ではなく80%ぐらいの診断能力で,発症早期は偽陰性が多くなります)パンデミックの患者さんと一緒に隔離される羽目になり,パンデミックに二次的に感染するリスクなどです.

又,多くの一般の方がパンデミックはこのまま起らずに収束すると思われていますが,専門家の間では必ず発生することとされています.そして世界的な戦略は,発生して如何に最小限の被害者で抑えるかが主眼となっています.局所で隔離して封じ込める努力をしつつ,世界への拡大の時間を遅らせて,その間にワクチンを作って医療従事者にまず注射,そして一般人へ注射というのが基本戦略です.

世界で1億人以上が死ぬと言われている病気に,
個人としてできることは,(1) インフルエンザのワクチンを打つこと,(2) 外出しなくて住むように食糧を備蓄すること,(3) マスクを準備しておくことです.
会社としてできることは,WHOのパンデミックのフェーズ4・5となった際に出社する最小人員を決めておくことです.

参考までに,WHOのパンデミックのフェーズの表を添付しています.現在は「フェーズ3」です.

 

そして衛生委員会では..,

個人の感染による労働力損失,及び,周囲の二次感染による労働力損失を考慮しても,インフルエンザワクチンの摂取推奨は経済的にも妥当性があると考えています.この効果を出すには,前述の如く集団としてある程度の摂取率が必要です.周囲でまだ受けていない人がいれば,是非勧めてあげてください.

 

今回はインフルエンザだけの話ですが,日本は麻疹輸出国,日本脳炎予防接種中止,MMR(3種混合)の中止に象徴される,予防接種の後進国と言われています.他人任せではなく知識を身に付け自己防衛する必要が高い国なのかもしれません.

 

http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/phase/en/index.html

FAQ

Q: 「パンデミック」という状態は「スペイン風邪」みたいなものですか?

A: スペイン風邪と要は同じなんですが,それ以上のインパクトがあるといわれています. インフルエンザの表面にHNとかいう蛋白(?)があって,通常のものはH2とかH3とかいうものですが,今回はH5となります. 

通常のインフルエンザは車でいうところのマイナーチャンジで通常免疫で認識されますが,今回のウイルスはフルモデルチャンジになり今までの免疫では認識されず,世界中の誰も免疫を持ってないことになります.現在のところ鳥インフルエンザは確か感染者の40-50%(?)が死にいたる強力なウイルスです.人に感染力を持ったときにどれほどの致死性があるかは誰も予測できません.私は約1億死亡と書いたのですが,実際の予測はもっと高かったと思います.(あまり脅してもと思って小さい数字にしました.)...状況次第では世界の人口が半分になっちゃうことだってありえる訳です.

あとがき

不定期ですが一般的な健康に関する話題をコラムとして書かせていただくことになりました.本来であれば,正確な文献を元に書くべきですが,小生の時間的余裕も考え基本的に私の記憶に頼って書いています.多く誤植がある可能性はご了承ください.


[1] パンデミック:鳥インフルエンザが人から人への感染力を持つようになった状態

| | コメント (4) | トラックバック (0)

« 2008年6月 | トップページ | 2008年8月 »