現在の会社は抗体医薬の開発をやっている。同じ医薬業界といっても全く違う世界でいろいろ新しい学びがある。今日は、抗体医薬の開発環境について触れたい。
一般的に、新薬の開発はどんどん難しくなり、昔ながらの低分子化合物→抗体医薬がトレンドである。そしてこの抗体医薬はやたら高価で、ただでさえひっ迫した各国の医療費にさらなる負担となり、公的保険でカバーする・しないというのが話題になっている。英国などは、治療効果に対して、薬代が似合ってないということで保険でカバーしないということが実際に起こっている。お金がある人or国でしか受けられない薬となっている薬である。
抗体医薬の雄であるGenentechは、この薬の原価に関する詳細な数字は明らかにしていない。
ただ、実際に抗体医薬の開発に従事して、どうしてこの薬が高くて、しかも日本発の医薬が出てこないのかが段々と解ってきた(つもり。。。)。
ずばり、純粋に 生産コスト+特許料(ライセンス料)が高いから。。。っと思われる。
例えば
1. 何か治療に有用と思われる膜蛋白(例えばCD00としよう)が発見された。(これを治療に利用するための特許A)
2. そしてこのCD00を標的としてネズミの抗体を作成。
3. このネズミの抗体をヒト化する。(外注+ヒト化抗体開発法の特許Bを利用)
4. ヒト化抗体を量産化。この量産化工程に特許Cが抑えられている。
GMP準拠の抗体を生産するコスト(決して安くない)の上に、上記の基幹特許A+ヒト化抗体開発特許B+量産化特許Cの費用が上乗せされる。
特許契約内容によるが、一年毎に基本feeがかかり、開発フェーズが上がる毎のmilestone fee、そして上市した際には売上の5-15%のloyality feeが課せられる。
特許が何件も絡んで来ると、雪達磨式に特許料がかかっていく。。。
生産コスト(GMP準拠)の上に、前臨床試験費用(GLP準拠)・臨床開発費用(GCP準拠)・特許料がかかり、やたらと高い原価となる。その上に開発に失敗した他の薬剤の開発費用も回収するとなると必然的に薬は高くなる。。。。
。。。っで、普通の体力のバイオベンチャーではこの開発コストは耐えられない。しかも日本では厳しい審査で、日本先行開発は効率が悪い。日本で抗体医薬が開発されないと、それができる人材・ノウハウが育たない(悪循環)。
貯金好きの文化から、いわゆる博打打ちのようなバイオ産業にはお金も集まらず。。。どんどん世界から取り残されいく。。。
そもそも、英語圏の人材(むちゃくちゃ多い)に比べると、日本の人材は層が薄い。。。
こんな日本の厳しいバイオ産業の環境を改善するには課題が多すぎる。。。
アメリカのバイオベンチャーの土壌が,肥沃で湿度が高くて草の生えやすい気候に例えると...日本のバイオベンチャーの土壌は,砂地でしかも雨のあまり降らない湿度の低い乾いた気候...こんなところではよっぽど運の良い種しか実らない.
日本の規制行政が革新的に変わらないと無理と改めて痛感する...そして規制行政が変わるためには,そもそも我々国民自身の過度のリスク回避文化が変わっていかなければならない.
最近のコメント